となり町戦争

『となり町戦争』三崎亜記
集英社 \1400

となり町戦争

となり町戦争

タイトルだけをみて、最初は、宗田理の『ぼくらの七日間戦争』を思い出し、そんな感じのお話なのかと思ったのだけど、この物語の主人公・北原修はどこにでもいる普通のサラリーマン。独身、一人暮らし。
となり町との戦争がはじまったのを知ったのが、広報誌。ありえない設定なんだけど、まったく実感のないまま広報誌の町勢概況欄を見ると確実に死亡●名うち戦死者▲名と載っている。
そんな彼のもとに「戦時特別偵察業務従事者の任命について」という通知がきた。ちょっとした興味本位から、その従事者に任命された彼は、役場のとなり町戦争係の香西さんという女性と便宜的に結婚し、となり町の役場近くのアパートを拠点に偵察業務を行なう。
戦争とはいうが、暴力的な描写はいっさいなく、戦争も役場の業務のひとつと位置づけ、着々と業務をこなす香西さん。なぜ、戦争をしなければならないのかわからない主人公。
不思議な物語だ。