下流社会

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)


表紙裏の説明書きによると

下流社会」とは具体的にどんな社会で、若い世代の価値観、生活、消費は今どう変わりつつあるのか。マーケティング・アナリストである著者が豊富なデータを元に書き上げた、階層問題における初の消費社会論。

である。


 世代別・男女別にいろんなアンケート、例えば「あなたの生活水準は次のどれにあてはまると思いますか」と「上」「中の上」「中の中」「中の下」「下」の5つのうちから1つを選択させ、学歴や既婚・未婚、年齢との割合をみていくので、やたらにその数字が出てきて、”数学嫌い”の私は数字がたくさん並んでいるページはつい読みとばしてしまう。
 高度成長期は、国民の誰もがガンバレば「中流」になれたけど、今は階層格差が広がっているんだって。
 つまり、戦前あたりの階級社会は
  わずかな「上流」(資本家とか、家にお手伝いさんがいるような)と
  たくさんの「下流」(働いても働いても豊かになれない貧乏人)だけだったけど、高度成長によって、たくさんの「下流」さんが、「中流化」したのだそう。
 だけど、今は、この「中流さん」が「中」のままの人と、「下」に下降する人が多くなっているそう。ここでいう「下」の人は、ホントにお金に困ってるとかではなくて、「中の下」くらい。意欲や能力が低いのが下流さん。

 いろんなデータからいろんな話が書かれていたけど、中でも興味深い話をひとつ。

 恋愛結婚は「階級や身分の壁」が存在していてはできない。ロミオとジュリエットのように。そうゆう意味で、高度成長期の「中流化」の時代には、恋愛結婚はふさわしい形式だった。
 だけど、80年代以降、日本社会が「中の下」に下降する「下流社会」になって階層化してきたなら、晩婚化が進んだ理由のひとつとして考えられるのでは?というのだ。大げさに言えば、「階層化が進んで、恋愛結婚がしにくくなって晩婚化」ということ。

 一流商社マンはパチンコ屋で働くおねえちゃんとは結婚しないし、ミリオネーゼ系女性は自分のオフィスを掃除する男性とは結婚しないのだ。

 
所得、職業、学歴、趣味など、すべてにわたって階層が違うため、話も合わないためだという。
 ちなみに、ミリオネーゼ系女性というのは、高学歴、高職歴、高所得で、上昇志向、頑張り志向で、自己啓発志向が強い女性で、月収100万円相当(現実は年収500万円程度?)のリッチなキャリアウーマンのことらしい。
 そういったミリオネーゼ系女性は、夫も高所得であることが多いという。

 そもそも高所得の女性は、人生の中で、大学の同級生、会社の同期、取引先など、高所得の男性やその候補生と出会うことが多いからである。

という。

 恋愛でも、仕事(営業)でも、重要なのはコミュニケーション、積極性と自己アピールだから、一定のコミュニケーション能力を身につけた女性は、仕事でも恋愛結婚でも自分の願いを成就する可能性が高いというのだ。
 つまり、コミュニケーション能力の高い男女ほど結婚しやすく、仕事もでき、消費も楽しむ。一方、コミュニケーション能力の低い男女ほど結婚しにくく、一人でいることを好み、仕事にも消費にも意欲がない。こうして、ますます階層は広がっていくのだという。

 こうした階層格差の固定化を避けるために、著者は、親の経済力、職業、地域社会の特性などの、子供自身が選択できない外的環境の差からくるすべての不平等をなくす「完全な機会均等」の徹底が必要などいう。
 親がどうであれ、子供に能力があるのなら、高い教育も受けられ、地位の高い職業に就くことができるようにしてあげるのだという。