蒲公英草紙

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)


自分が幸せであった時期は、その時には分かりません。こうして振り返ってみて初めて、ああ、あの時がそうだったのだと気付くものです。人生は夥しい石ころを拾い、背負っていくようなものです。数え切れぬほど多くの季節を経たあとで、疲れた手で籠を降ろし、これまでに拾った石ころを掘り起こしていると、拾った石ころのうちの幾つかが小さな宝石のように輝いているのを発見するのです。