それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

主人公 代助はもうそろそろ30の放蕩息子?

別に放蕩してるワケじゃないけど、実業家の親(&兄)の金で一軒家にお手伝いのお婆さんと、住み込みで雑用をこなす書生(←この門野もお気楽な身分だけど)を雇って、日々読書したり庭木をいじったり散歩に行ったりしながら過ごしてる。
時代の感覚が違うのかもしれないけど、今でいうフリーターみたいなもんでしょ。定職を持たずにプラプラしてる。

でも、高尚な思想の持ち主で、日本の社会が精神的、徳義的、身体的に健全でないから働かないという。食うための職業は誠実にはできないと。そんな一般ピープルでは思いつかない広すぎる視野に立って生きているみたいだ。

たしかに、なんのために働くのか?ってのは永遠のテーマかもしれないけど。

彼が悩むのは、学生時代の友人・平岡の妻、三千代への思い。三千代は平岡と共通の友人の妹で、4人で仲良くしてたんだけど、お兄さんが亡くなって、三千代は代助の取り持ちにより平岡と結婚したという。
なのに、「三千代が平岡に嫁ぐ前、既に自分に嫁いでいたも同じことだ」とはどーゆうこと!?
つまり、友人の平岡の頼みで三千代との仲を取り持ったケド、3年経った今、親に結婚しろと散々言われて引くに引けなくなった今になって三千代への愛に気付くのだ。
だけど、当時の社会は「姦通罪」なんてのもあって、実家にも見離されて職業を探しに行くというところで終わってる。

ほんと、「それから」だわ。続きが読みたいところだけど、解説によると、『それから』は前年の『三四郎』、翌年の『門』と併せて三部作を構成すると見なされている、らしい。
なので、『門』では「不義」で結ばれた過去を引きずりながら社会の片隅でひっそり身を寄せ合って暮らしている夫婦のお話らしい。
読まねば。