『海嶺』 三浦綾子

海嶺〈上〉 (角川文庫)

海嶺〈上〉 (角川文庫)


心優しい音吉といつもにぎやかな久吉、無口だがしっかり者の岩松(吉)の漂流物語。
といっても、トムソーヤとかの冒険物語とは違い、実際に江戸時代にあった話で、史実に基づいて書かれているため、うまくハッピーエンド、とはいかない。

14人の乗組員のうち、生き残って陸にあがれたのは3人。
そこはカナダで、現地の奴隷として暮らすあたりは詳細に描かれていて、ぐんぐん読み進んでいった。
やがてイギリスの商社に救い出されて、アメリカ→イギリス→マカオと行くあたりはあまりおもしろみに欠けるが、仕方ない。
いよいよ日本へ向けて出発するあたりで、残りのページが少なく、再び日本に帰ることはできなかったという結末にはちょっと不満。
というか、それが事実だから仕方のないことだけど、やっぱり音吉をお琴(許婚)のもとに帰らせてあげたかった。

三浦綾子さんの作品は『塩狩峠』を初めて読んで感動したのがきっかけで他の作品も読むようになったが、今まで読んできた作品は、すべてキリスト教になんらかの関係のある人物が主人公であるが、白洋舎の創始者を描いた作品の方がおもしろく読むことができた。

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)